恵那山周辺 焼山(1709.2m) 2011年12月10日

所要時間
 8:57ゲート(標高870m)−−9:05 ロクロ沢林道分岐−−9:36 阿木恵那林道分岐−−10:05 阿木川を渡る橋(これより先は廃林道)−−10:08「44 ら歩道」入口−−10:43 標高約1420mで作業道分岐−−標高約1500mで笹原突入−−11:13 標高約1580mで刈り払い終了−(この間激笹藪漕ぎ)−11:22 薄い踏跡に乗る−(断続的に激藪漕ぎ)−11:48 1630m峰西で道に乗る−−11:59 1630m峰−−12:08 1650m峰−−12:40 1690m峰−−12:57 焼山 13:29−−13:44 1670m峰−−14:00 1610m峰−−14:34 阿木川−−14:54 林道−−14:59 ゲート

概要
 阿木川沿いの林道から1628m峰の南東尾根上の作業道を巡り、標高1500m以上で笹原に突入。積雪の影響か1580mからピークを巻く道は見当たらず激笹藪を漕いで焼山につながる尾根に。再び薄い道に乗るが雪で笹が寝て重い笹漕ぎの連続。道は1630m峰へは登らず南尾根に下ってしまい再び激笹藪漕ぎ。1650m峰周囲は樹林が深く笹が薄くなるが、それ以降は雪で重い笹藪漕ぎの連続で疲れ果てて焼山山頂に到着すると笹が刈り払われていた。山頂部は樹林であるが周囲は笹原でそこそこ展望がいい。南に下る尾根上に刈り払われた道があったので下っていくと1670m峰で東に下ってしまい再び笹藪漕ぎ(たぶん阿岳本谷沿いの林道に出る)。1610m峰から西尾根に入るがルートミスにより北側に下ってしまい、急斜面を避けて激笹藪をトラバースしながら阿木川へ。1か所だけゴルジュに落差10m程度の立派な滝があり左岸を高巻き。以降はおとなしい沢で林道に出た。

参考記録
2004/04/11 http://kumoyorimotakaku.web.fc2.com/mt_yamaaruki/yakeyama/yakeyama.htm この写真では笹が大規模の刈られたきれいな道ですが、今は笹が復活して道はほとんど消えかけてます

ルート図。クリックで拡大

 恵那山南部の山域には大川入山や鯉子山、阿岳、焼山など1500mを越える山が固まっているが、地形図を見る限りでは大川入山以外は登山道はなさそうだ。ネットで調べたがどこも盛大に笹が茂った籔山であり本来は残雪期が適期だが、地域的、標高的に積雪が少ないエリアであり、林道冬季閉鎖を考えると行きやすい時期とも言えない。大川入山は登ったので次に標高が高い焼山を狙うことにする。ネットで軽く事前調査した結果、西側の稜線上に道があるが途中から道無しとなり笹藪漕ぎらしい。東側から攻めた記事も見たが、こちらは林道が乗り越える峠から道無しのようで籔漕ぎ距離が長く、パスすることにした。

 登山口となる阿木川沿いの林道に入るのは東京から遠い。東京では前日に雪が降ったくらいで標高が高い所は雪が降ったのは確実で、山で雪が降るのは構わないが車道が通行可能かが心配だ。最初は中津川ICから国道363号線で入ろうかと考えていたが峠を越えるため凍結が心配だ。遠回りになるが恵那ICで降りて阿木経由で入ることにした。これなら平地経由なので凍結のリスクは低い。通常は夜中に現地に入るが今回は凍結が怖いので日がそこそこ高くなってから入ることとし、まずは恵那峡SAで仮眠。ここですら冷え込んで冬用シュラフでも寒いくらいでシュラフ2枚重ねで寝てちょうどよかった。翌朝には窓ガラスの水滴はカチカチに凍りついていた。

施錠されたゲート。バイクすり抜け不可能 ゲート前駐車余地

 恵那ICで降りて朝の恵那市街を通過、道路脇の温度計表示は-4℃、水溜りがあったらカチカチに凍りつく温度だ。東京では昨日の雨でまだ路面は乾いていないだろうが、こちらは早めに雨が上がったのか路面は乾いていたし日影にも雪は見られない。ロードマップを頼りに県道407号線で阿木を目指し、国道363号線で左折してすぐに「風神神社」の案内が登場し右に入る。この後も風神神社の案内に従って進んでいくと阿木川沿いの林道に変わる。どこまで車で入れるのか不明だが少なくとも神社まではOKだと予想していたが、神社を過ぎてもまだゲートが現れない。林道はダートに変わるがぬかるんだ場所は土ごと凍っておりスタックの心配は無くかえって有りがたかった。雪もまだ現れない。標高870mで林道が谷を巻いて大きくカーブした先にゲートが登場、その前に車2,3台が駐車可能なスペースがあり車を止めた。朝飯を食っているとパジェロが上がってきたが林業関係者ではなかったようでゲート前でUターンして戻っていった。

 本日の装備は雪をどの程度意識するか悩んだが、ここで雪が見えないのなら1700mでも深くはないと判断し、ピッケルにワカンはパスして6本爪軽アイゼンだけザックに入れた。いざという時のためのお助けロープは悩んだが置いていくことに。気温は低くほとんど発汗しないと考えて水は500ccのペットボトルに半分だけ。結局はこれさえほとんど飲まなかったのだった。

 ゲートは施錠され、両側はバイクがすり抜けられないようガードされていた。人間が通過する隙間はあるが自転車は通過できるだろうか。ゲートの上を通すのは苦労しそうだが、ネットで調べたら自転車利用者がいたのでどうにか越えられるようだ。林道は日常的に使用されているようで路面状態は良好、ゲートが開いていれば普通車でも全く問題ないレベルだった。

ロクロ谷林道林道分岐(右側の道) ロクロ谷林道林道分岐の標識
こんな標識も 標高の書かれた標識も
阿木川右岸に移る 狸沢を渡る橋
阿木恵那林道分岐 阿木恵那林道分岐の標識

 地形図で最初の林道分岐はロクロ谷林道で、墓戸峠を越えて上矢作町方面へ抜ける林道が分かれる。どちらも良好な林道だ。この付近で車が1台上がっていった(何故か地元ナンバーではなく北陸のナンバーだった)。林道が右岸に移り狸沢を越えて阿木恵那林道との分岐点。帰りがけに時間が余ったらここから天狗森山を狙おうと考えているがその時間的/体力的/精神的余裕が帰りにあるかは不明だ。また植生も不明であった。帰ってからネットで調べたら阿木恵那林道の途中に登山口があって比較的簡単に登れるようだ。開けた場所では遠くに白くなった稜線が見えているが焼山付近だろうか? 見るからに笹原の上に雪が乗った状態であるが、積雪量は数cm程度か。笹は立ったままのように見える。こりゃ、雪が乗った笹を漕ぐ最悪パターンかも。

あちこちにある 100m毎に標識あり

 なおも阿木川沿いの林道を進んでいくと追い越していったパジェロがエンジンをかけたまま路側に止まっていて運転手が車の中に残っていた。4人くらい乗っているのが見えたので残りの人員は山に入って何やら作業中らしい。どこまで行くのか聞かれたので素直に焼山と答えた。相手は道があるとも無いとも言わなかったので詳しくは知らないらしかった。まあ、こちらは籔漕ぎ覚悟で来ているのだが。なおも先に進みつつ左手の斜面に取り付ける場所が無いかチェックしながら歩いていく。何箇所か「歩道入口」の標識があったが当然ながらこれは林業作業用の道であろう。どこに続いているのかは全く分からない。

林道脇に雪が見られるように 奥の稜線が僅かに白い
阿木川を渡る橋の先で廃林道化 阿木川上流方向
ここから林道を離れて登り始めた 左の作業道入口標識

 1233m標高点を過ぎて緩く左カーブするところでも歩道入口があったが、この時点では現在位置が特定できなかったためさらに進み、大きく右カーブして阿木川を渡る場所で現在位置が判明、ついでに車が通行可能な林道はここまでで、この先は派手に山側が崩壊して廃林道化していた。阿木川を渡ってしまうと左岸尾根に取り付くこととなり、途中までだが道があるはずの右岸側から外れてしまうためUターン、直近の「44 ら 歩道入口」から斜面に入ることにした。さて、この道はどこまで続いていてくれるのか。最初から籔漕ぎは困るからな。

いきなり笹が被るが距離は短い 植林帯はしっかりした道
いくつか支流を横切る。凍結あり 主稜線は結構白い

 この道は最初は幅が広く廃林道らしかったが、そのうちに道幅が狭まって歩道サイズに落ち着く。開けた場所では笹が生い茂って両側から被さった場所があったがそれも最初だけで、すぐに植林帯に突入すると笹は薄くなり、歩道上はしっかりと刈り払われていた。予想よりもずいぶんいい道だ。これがせめて稜線まで続いているといいのだが。この道は阿木川右岸を高巻いたまま沢の上流を目指して緩く上がっていく。さて、最後はどこに連れて行かれるのか。道にはピンクリボンが頻繁に登場するが道が明瞭なので目印など不要だった。小さな沢をいくつか横断するが、しぶきがかかる範囲はツルツルに凍っており足を置く場所は慎重に選ぶ必要があった。雪はほんの僅かで数mm程度で今は全く問題なし。開けた場所では沢の奥に稜線が見えたが、やはり薄く雪が付いて結構白かった。やはり主稜線は笹がメインで樹林は僅かのようだ。あれで道が無ければ地獄かも。

標高1420m付近の分岐。赤布登場 左記分岐で尾根を登る道

 標高1420m付近で初めての分岐が登場。このまままっすぐ沢沿いに進みそうなものと、左に上がるものだ。ここには意味ありげな赤布が下がっており、これはいかにも登山者が付けた物のように思えた。しかしどちらの道が正解なのか分からない。この場合、少なくともこのまま沢沿いに進むものよりも左に上がる道の方が稜線に上がれる確率は高いと判断、左の道に入った。道の濃さは今までと同様で外れくじの感じは無く、小尾根に乗ってグイグイと高度を上げていく。ちゃんと刈り払いもされていてこの先も期待できそうだ。

しっかりした道が続く 刈り払いが続く
標高1500m直下の急斜面 標高1500mで刈り払い終了

 高度が上がって檜植林から唐松植林に変わると周囲が明るくなる。天気予報は気圧の谷の影響で午後から曇りの予報だが今はドピーカンだ。標高1500m近くなるとかなりの急な尾根を登らされ、1500mですっぱりと樹林が終わって背丈ほどの一面の笹の海に変わった。劇的な植生の変化で自然のものとは思えず、たぶん過去に大規模な伐採がおこなわれたか山火事があったのだと思う。このような日当たりがいい場所は笹の勢いが強く籔漕ぎは手ごわいだろうなぁ。

下界を振り返る まだ道があり横にトラバース

 まだ刈り払いの道が続いたが、笹原に変わった直後にとうとう道が消えてしまう。この先は僅かに雪が乗って濡れた笹藪が当分続きそうであり、上下のゴアを着てロングスパッツを装着、籔漕ぎ体制を整えてから再出発。左に僅かに笹が薄い場所が続いていたのでそれを辿ると今度は大きく右カーブし、トラバースするように薄い道が続いていた。今までと比較すれば笹がかなり濃くて雪の重みで笹が垂れ下がってルートを塞いではいるが、まるっきりの笹藪よりはずっと歩きやすかった。この状態がどこまで続いてくれるか。

焼山方面 尾根上に道あり
ここが道の終点らしい 道終点より先は雪が乗った笹
山頂方面の展望

 これから上を目指すのかと思ったらすぐに右にトラバース開始、谷の源頭を巻いて東隣りの尾根に乗り、その尾根を登っていく。この尾根上は道が明瞭となりぐっと歩きやすくなり、こんな道がずっと続いてくれれば大して時間はかからないだろうと思わせる状態だ。しかしそうは問屋が卸さない。標高1580mで傾斜が緩んで肩になると道は尾根から外れて1628m峰の東側を巻くようになるのだが、ここで道がフェードアウトしてしまった。いや、もしかしたら薄い道の跡が続いているのかもしれないが、イヤらしいことにこの付近は笹の上には数cmの積雪があり、その重みで笹は全て右側に傾いており、たとえ道があってもその上を雪が被った笹が覆ってしまっているので判別不可能だ。トラバースするにはその半端な横倒しで絡み合った笹をかき分ける必要があるが、雪の重みも加わって腕の筋力がかなり必要で進行速度が一気に低下する。ごく僅かな谷のトラバースはそれこそ激笹藪で腕を突っ込む隙間さえ無い。そんな場合は肩で押し分ける。今の雪の状態は最悪で、無雪の時やもっと雪が積もって完全に笹が倒れた後ならもっと楽に歩けるだろう。完全に山の選択を失敗してしまった。ゴアの袖と手袋の隙間から大量に雪が入るようになり、それを防止するために腕カバーを犠牲にした。おまけに頭から大量の雪を被る羽目に。これはゴアのフードで防げたが、籔漕ぎでここまでやったのは初めてかもしれない。

雪が乗った激笹藪漕ぎ開始 山頂はまだ遠い

 このままの積雪と籔の状態が山頂まで続くのなら、とても体力、気力が持ちそうもないので即座に撤退を決断するのだが、それができない理由があった。もう主稜線は目と鼻の先だが、そこには笹の上に雪が載っていない一筋の列が稜線南側直下に続いているのだ。これは動物が籔漕ぎした跡か、笹の密度が低くて雪が薄く見えるかのどちらかだろうが、参考にした山行記録では確かこの付近に刈り払われた道があったはずであり、道の可能性が高い。あれに乗れれば楽ができるだろうとの期待が大きかったのだ。見える範囲では1630m峰から南に落ちる尾根上にその筋が続いており、1630m峰から先に道があるのか不明だが、あそこまで道が使えるだけでも労力はかなり節約できるはずだ。

筋に乗ったが予想したような道ではなかった この付近は筋不明瞭で激籔漕ぎ
振り返れば笹ラッセルした形跡がくっきり

 苦労してようやくその筋(らしき)に乗ったが、現場に達すると期待はずれで道のような明瞭なものはなく周囲より僅かに笹が薄い筋であり、当初は乗ったこと自体が分からなかったほどだ。でも今までの激藪よりは格段に籔漕ぎがマシになって速度が大幅に上がる。でもそんな状態は筋がある区間全体の半分程度で、残りはさっきと同じ激藪状態だ。これも雪で笹が筋を覆い隠した影響か。とにかく、ずっと筋を辿れる状況ではなかった。

1630m峰への登り。道無しの雪付き激笹藪

 1590m峰南側まではそこそこ筋を追えたが、1630m峰への登りにかかると全く筋が判別できなくなり、これまた雪で重くなった激笹藪漕ぎの連続。今度はトラバースではなく登り斜面であり、笹は横ではなく下を向いて傾いているのでいくぶん掻き分け易くなったが雪の重しつきの「逆目」なので無雪期と比べれば格段に疲れる。休みたいところだが笹は一面を覆って全く隙間が無く座る場所など無い。

1630m峰西斜面の道に出た
辿ったルートを振り返る。笹ラッセル痕がはっきりと残る

 歩いていても体感的には笹が薄い所が判別できない程度であるが、高度が上がって標高1650mラインに達すると自然に南にトラバースし始め、どこが始点なのか分からなかったがいつの間にか再び道に乗っていた。こちらの尾根の道は今までの稜線上の道とは様相が違い、少し進むと間違いようが無いくらい明瞭になった。さっき登ってきた尾根からは、この道はこの尾根をこのまま南に下っているのが見えたが、もしかしたら阿木川沿いの作業道を離れて尾根道に入った分岐でそのまま沢沿いに進むとここに出られるのだろう。だとしたらそのルートの方がずっと籔漕ぎの距離は削減できるはずだ。まあ、この辺の情報は私より後で挑戦する人に生かしてもらうか。

道を外れて笹を漕いで1630m峰に登る 1630m峰から見た1650m峰
1630m峰から見た焼山。これまでの籔の程度を考えると山頂はやたらと遠い

 というわけでこの道は下ってしまうのは分かっていたので、せっかく籔が薄くなったのにそれを外れてまたもや激笹藪漕ぎに突入。といっても多少高度が上がった影響か、それとも地形的な影響か、今までよりも笹が低くなったように感じて頭から籔に突っ込むことは無くなった。おまけに少し雪が多くなり笹の倒れ方が大きくなり、視界が利いて大いに助かる。すぐに1630m小ピークに到着、この次の1650m峰はシラビソ?樹林に覆われているのが見えた。これはいい兆候で樹林で日当たりが悪い場所は笹が薄いことが期待できる。次の1690mは落葉樹林で笹はどうだろうか。その奥に南から延びる尾根が合流した焼山山頂が見えているが、籔の状況を考えると遥かに遠い。

1650m峰への登り 樹林帯に突入。笹が薄くなる
シラビソ樹林。笹はあるがかなり薄い 檜樹林は地面が出ていた

 1630m峰の下りでは笹が雪でまとまっており、足で踏み付けるとある程度の範囲の笹がまとまって倒れるようになり格段に歩きやすくなった。もう少し積雪があれば、ワカンやスノーシューを併用してさらに楽になるだろう。しかし登りに変わると再び激笹藪突入。樹林で笹が薄くなることだけを期待して、尾根を外れて最も近い木に向かってがむしゃらに登ると予想通り木の下は笹が薄く、シラビソ樹林帯に入ると激藪から解放されてほっとすることができた。笹が全く消えたわけではないが密度が全く違う。今は手で簡単にかき分けられる。少し進むと植林帯だろうかヒノキ林になり、ここはほとんど笹が消えて久しぶりに地面が見えた(実際は数mmの雪に覆われ真っ白)。数は少ないが目印も見られたが、笹の海の中では目印を付ける場所が無く、樹林の中だけ取り付けたのだろう。取り付け高さから考えて無雪期のものだと思う。目印はあるが踏跡は皆無だ。

1650m峰から見た1690m峰 1690m峰への登り。笹が繁茂

 1650m峰を越えると樹林が消えて再び笹の海。少し上れば落葉樹林が見えているが、そこまでは樹林皆無の日当たり良好な笹原で笹の勢いが強い。登りなので籔漕ぎ労力は相当なもので時々立ち止まって息を整える必要があった。落葉樹林帯に入って笹が薄くなるかと思ったが全く状況は不変で、雪が乗って重い笹藪漕ぎが延々と続いた。さすがにこれには嫌気がさして撤退の2文字が頭に浮かんだが、せっかくここまで激藪を漕いで山頂までもうすぐというポイントまで来ているのだからと気力を振り絞る。

樹林中も開けた場所も深い笹 1690m峰から見た焼山
緩やかな下り。笹は相変わらず 登り返しも笹藪

 1690m峰はなだらかで広く最高地点がどこなのか判別不能だ。ここも一面の笹原で踏跡は見られない。焼山山頂はもう眼と鼻の先だが、どうやら相変わらずの深い笹藪が続きそうだ。だだっ広い尾根でどこが稜線上なのか不明確な笹藪は北側の樹林帯を下り、登りに変わっても明るい落葉樹林で笹の濃さは変わらず雪まみれになって掻き分けた。

気付かなかったがシラビソ樹林が山頂直下 焼山山頂。きれいに刈り払われていた
焼山三角点 山頂標識 その1
山頂標識 その2 山頂標識 その3
焼山から見た1628m峰。自分の笹ラッセル痕が明瞭 恵那山は雪雲の中
焼山から見た大川入山〜蛇峠山(クリックで拡大)
焼山から見た南ア深南部(クリックで拡大)

 最後はシラビソ樹林に変貌、ここでやっと笹が薄くなるかと期待したらとんでもな光景が待っていた。なんと平坦なピーク一帯の笹はきれいに刈り払われて、その真ん中に三角点が飛び出していた。刈り払われた範囲は20m四方くらいはあり、個人で作業するにはあまりにも労力がかかる仕事量であり、地元自治体か林業関係者が機械を使って刈り払ったとしか考えられない。木も少し伐採した形跡があり、そこそこ展望が得られた。そしてさらに予想外の展開が。なんと南に延びる尾根上には刈り払われた道が。いったいどこに続いているのだろうか。もしかしたら阿木川より先の廃林道のどこかに登り口があるのかもしれない。今まで掻き分けてきた笹藪に再突入するより、こちらの道に賭けてみる方がいいかもしれない。もし道が別のところに下っても、笹藪(であろう)尾根を下ればいいのだから往路よりも悪いということはなかろう。下るとすれば1610m峰から南西に下る尾根が林道に出るために最適だろう。

 山頂から僅かに下った日当たりのいい場所で休憩。木の枝に濡れた腕カバーをかけておいたが、出発時に回収したらカチカチに凍っていた。天候はいいが気温は0℃以下のようだ。今年初めて寒さでつま先が痛いくらいだ。こんな中を雪まみれで笹藪漕ぎしてきたのだから・・・。腕カバーを外して初めて現在時刻が判明したがほとんど午後1時! なんだそりゃ! あの激籔漕ぎを含めて4時間無休憩だったとは。これじゃあまりのんびり休憩していられないな。

 さあ、下山開始。この道が阿木川沿いの林道に下っていることを望むばかりだ。通常は下部から籔を切り開くはずで、まさか途中で消えることだけはないだろう。問題はどこまでこの尾根上を通っているのかだ。何せ情報皆無なので行ってみるしかない。

南へ伸びる尾根上に刈り払われた道が! 切り落とされた枝の断面は真新しい
きれいな道が続く 完璧な刈り払いだ
往路の尾根が見える。まだ笹ラッセル痕がくっきり!

 この刈り払いは最近なされたばかりのようで、新しい笹が延びた形跡は無い。それに山頂の枝の切り口もかなり新しかったし。プッツリと道が無くなるのが一番怖かったが、そんな心配をよそに良好な道は続く。そして1670m峰で刈り払いは予想に反して東に下ってしまった。ということは阿木川沿いの林道ではなく阿岳本谷沿いの林道に下っているということになる。こちらの林道はどこまでマイカーで入れるのか不明だが、籔漕ぎは皆無のはずなので多少林道歩きが長くても利用価値は高いだろう。ネットで調べた範囲ではこの道の記述がある記録は無いが、来年あたりは出てくるかもしれない。焼山は岐阜百山に選定されているので、全くのマイナー籔山ではない。

1670m峰山頂 1670m峰から刈り払いは東に下る
1670m峰から見た焼山 南西の稜線上は踏跡なし
1670m峰から笹を踏みつけながら下る 1670m峰を振り返る

 樹林が開けて展望のよい1670m峰から南西に延びる主稜線には全く踏跡は無く、しばらくは樹林が切れて一面の笹藪が続いていた。こういうところは笹が濃いのは身にしみて分からされたので低い樹林がある北側に迂回気味に歩きだし、途中で方向を変えて笹原に突入。下り坂の影響もあるが、こちらは往路よりも笹が低くて若干歩きやすい。雪の重みで倒れかけた笹を選んでルートを結び、足で踏みつけて笹の上を歩ける状態が多かったのも大助かりだ。1620m平坦地になると樹林に突入、しかし笹はあまり薄くはならず、積雪が減って逆に籔漕ぎがひどくなった。

平坦になると樹林登場。でも笹は消えない 1610m峰

 1610m峰まで同じような状況が続き、明瞭ではない1610m峰に到着。明らかに標高が落ち始める個所に出て1610m峰であることを確信し、主稜線を外して進行方向を右(西)にとる。あとはこの尾根を追っていけば阿木川沿いの林道に出るはずだ。尾根は明瞭であるが踏跡は皆無、相変わらず樹林と笹原の混合植生が続く。しかし少し下って心配事が。この尾根は周囲と比較すれば大きいものだが、当然ながら主尾根よりは小さく低い。ところが、見通しがある左を見渡しても主尾根が見えない。ここで地形図を見れば主尾根は直角に南に向かっているので隣に見えるわけはないのがわかるのだが、この時点では雪が積もった笹をかき分けるために手袋を付けていたし、ウェストポーチは雪が解けて水がしみこみ、紙にプリントアウトした地形図は水で濡れてボロボロになるし、濡れて紙が張り付いて手袋を取らないと地図を広げることができない。このような状態では地図をいちいち取り出すのが面倒で、記憶の中だけで思考を進めてしまい、1610m峰付近はなだらかな地形でこれはきっと主尾根であり、目的の尾根はもっと右側(北側)にあると誤認してしまった。

1610m峰より西尾根を下る 唐松植林帯も笹藪
ルートを誤認して北斜面を下り始める 小さな谷に出る

 尾根を外れて右側の斜面を下り始める。最初は傾斜が緩かったが徐々に傾斜がきつくなってくる。自然林に変わるが笹は相変わらず繁茂しており、下りはまだマシだが登りはイヤらしいだろう。適当に下りつつ小尾根があれば取り付こうと考えていたが尾根は無く、そのうちに小さな谷に辿りついた。谷は途中で滝がある可能性があるのでできれば避けたいところだが、周囲は尾根は見当たらないし谷は穏やかそうなので、とりあえず谷に沿って下ってみることにした。

こんな場所は高巻きで通過 通過困難な場所は笹藪に逃げて迂回。かなり濃い
この開けた谷はヤバかったので横断だけ この涸れ谷を下った
下ってきた谷を見上げる。結構強烈な傾斜 阿木川本流に出る

 流れは僅かで水没は考えなくていいが凍結個所があるので足を置く場所は要注意だった。岩が凍っている場所は高巻きして通過する。そのうちに自然林から植林に変わると傾斜が急になってきて、凍った岩場が増えてきて沢を下るのは危険になってきたため右の植林帯に逃げ込んだが、檜で日当たりが悪い割に笹が高密度で横移動は猛烈な籔漕ぎが必要だった。かなりの傾斜で沢もこの傾斜だとヤバそうだが、あまりにも籔が酷いので重力の助けで下に向かい、籔の隙間から沢の様子を見ると何とか歩けそうな状況だったので再び沢に立つ。しかし長続きせず沢の周囲がガレて危険となり、今度は左岸側に逃げる。ここも籔が酷くトラバースに苦労するが、傾斜が相当急であり、籔の隙間から見える下部はガレていそうな様相で激藪と格闘して横移動を続ける。どうにか今までより傾斜が緩んだところで下に移動開始し、先が明るくなったところで恐る恐る下を見ると樹林が開けた枯れた谷だった。幸い、ここはガレておらず草付きで、滑落のリスクが少なそうなのでこれを下ることに。下部には阿木川らしき流れが見えている。その沢に立つ直前でガレ混じりで傾斜が急になったため右手の籔に逃げて木に掴まりながら下り、無事に太い沢に立った。高度計の表示は1330mだった。

しばし穏やかな谷が続く 流れがゴルジュに吸い込まれる。ここは通過不能
左岸に逃げる この超急な涸れ谷を下った

滝本体。落差は10m程度? 迂回に利用した谷

 阿木川本流と思われる沢は穏やかで、水量は渡渉困難なほどではなく、歩きやすい所を求めて左岸へ右岸へと何度も渡りながら緩やかに下っていく。このまま滝が無ければいいのだが。籔が無いというのはこれほど楽に歩けるのかとうれしくなるような状況だった。凍って滑りやすい所さえ避けて歩けば安全上の問題は無かった。しかし、両側が切り立ってゴルジュ状になってくると状況があやしくなってきた。とうとう流れがゴルジュに吸い込まれ、とても下りられそうにない場所に出た。ここは高巻きするしかないが、今は左岸側にいるので左岸から高巻きすることに。急斜面をよじ登って植林の小尾根に取り付き、少し高度を上げて反対側の斜面で下れそうな場所が無いか探しながら進む。高度が下がったせいか笹は無く結構歩きやすい。もしかしたらかなり登り返さないとダメかと思ったが、さほど進まないうちに右に下れそうな斜面が登場、そこは小さな谷に続いており、沢の本流までかなりの急傾斜だが下れないほどには見えない。落石には注意が必要だろうが行けると判断、急斜面を下ってガレが詰まった小さな谷に降り立つ。ここは水の流れが無く凍結個所が無いので滑る危険が無いのは大助かりで、できるだけ足場がしっかりした石に足をかけながら下る。足元で崩れた石は止まることなく沢まで転げ落ちるくらいの傾斜だったが、意外にしっかりした足場が得られる沢で下っていて不安は感じられなかった。そして再び本流に立った。上流を振り返るとくらいゴルジュには落差10m程の立派な滝がかかっていた。上流からは見えなかったが、これじゃ沢沿いに下るのは不可能だったわけだ。

滝より下流は再び穏やか 堰堤が登場すれば林道は近い
林道到着

 この先は穏やかな沢が続き、やがて堰堤が登場。人工物があるということは林道が近いはずで、その予想通りに往路で見た流木が引っ掛かった橋が登場。やっと完全な安全地帯に戻れた。刈り払われた道を外れてからなかりの時間がかかったように感じられたのだが、あとで所要時間を確認すると1時間ほどしかかかっていなかった。

狸沢 ゲート到着

 残りは林道歩きのみ。往路で見た車は既に消えていて、阿木恵那林道に合流すると新しい轍があり、今日も複数の車が入っていたようだ。帰路は車に会うこともなくゲートに到着。エンジンを暖機しながら着替えを済ませて下界に向かった。

 

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